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2024.11.27

Vol.11 鎌倉の『ヴィヴモン ディモンシュ』のマスターが30年見つめ続けた、湘南の街と暮らし | 湘南と。

聞き手:andsaturday inc. 庄司真帆

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Vol.11 鎌倉の『ヴィヴモン ディモンシュ』のマスターが30年見つめ続けた、湘南の街と暮らし | 湘南と。

鎌倉で30年の時を歩んだ、伝説的な存在

鎌倉の小町通りの脇道に行列をつくる『ヴィヴモン ディモンシュ』は、今年でオープンから30周年を迎えました。もはや説明不要とも言える、鎌倉を、そして湘南を代表するお店です。

一般的に想像するカフェとも違う気がするし、昔ながらの喫茶店でもなくて、ディモンシュであるとしか表現しようがない、この場所だけの優しい時間が流れる唯一無二の存在。

 

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開店時間の前にマスターの堀内隆志さんに会いに行って話を聞いていると、平日にも関わらずお店の前には列ができていきます。30年を積み上げてきたディモンシュの扉が開かれる瞬間を、ご年配の方、家族、若いカップル、そして修学旅行に来た中学生のグループまでもが、ワクワクした顔で心待ちにしていました。

「元々はパリのカフェに憧れて、1994年に26歳でお店をはじめました。空間に音楽を合わせることで場をつくることに惹かれたんです」。音楽が流れる店内で、堀内さんが焙煎するコーヒー、奥さまである千佳さんがつくるパフェやスイーツ、そしてオムライスを思い思いの形で楽しむことができる、懐の深いお店です。

 

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「30年も続けていると、街にも自分にもたくさんの変化がありましたね。でも、自分の好きなコーヒーの味や好きな時間の過ごし方は変わりません」。時間の経過とともに風景が移りゆく鎌倉の街と、堀内さんの考え方。そして同じように、伝統を大切にする鎌倉の変わらない街と、堀内さんの変わらない信念が重なります。


時の流れの中で、お店を続けることが大変な時期もあったと言います。最初はお客さんが来ない時期が長く続いたり、自分への給与がずっと払えない時があったり、震災やコロナ禍もがむしゃらに頑張って乗り越えてきました。

そして今、ディモンシュは、30年経ってようやく堀内さんにとっての理想に近づいてきたそうです。

 

今振り返ると、この街を選んで良かった

堀内さんはお店を持つなら鎌倉と最初から決めていた訳ではなくて、ご縁が重なって今の場所を選んでいます。堀内さんのお母さまとお姉さまが見つけてきた物件でした。

「子どもの頃に歴史が好きだったので、それで鎌倉を訪れたことがあったくらいで、そこまで特別な感情を持っていた訳ではありませんでした。でも30年を振り返ってみて、今やっぱり鎌倉で良かったなと思うんです」。

 

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そんな堀内さんは、お店を開く前に葉山の永井宏さんのギャラリーに通う中で、湘南の人たちの自由な暮らしへの憧れを持つようになりました。この街で出会う人たちが、自分の時間を生きているように思えたのです。

「30年前の鎌倉はもっとスローな時間が流れていて。この街だったら都会の忙しさに関係なく、自分のペースで好きなことに没頭できるのではと思ったんです」。そして、鎌倉での長い長い挑戦の日々は始まりました。

「最初の頃は暇で暇で。でもそういうところも含めて、面白がってくれる人が少しずつ集まって来てくれたんです」。ディモンシュに集まる様々なジャンルのカルチャーに精通した人たちとも親交を深め、鎌倉のこの場所でつながった全ての出会いが今の堀内さんの財産になっています。

地道に続けることで街に根差し、SNSが無かった時代にも人が人を呼んで、そして少しずつ行列が伸びていきました。

 

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「もし東京でディモンシュを開いていたら、きっと今のお店の形とは違う表現になると思います。鎌倉の街の人と空気が、今のディモンシュをつくってくれていますね」。

そう話す堀内さんは、鎌倉という街への感謝と愛情の念を常に持ちながら、今日もカウンターから街を眺め、コーヒーを淹れ続けています。

 

鎌倉の山で見つけた、暮らしと向き合う時間

営業日には必ずお店に立ち、閉店した後は深夜まで焙煎をするという生活を、今なお続けている堀内さん。そしてそんな堀内さんを支え続けてきた、千佳さんとの暮らし。

「正直お店のことにがむしゃらで、今まで夫婦で暮らしにきちんと向き合えていたのかは自信がありません。それでも鎌倉山に引っ越してからは、暮らしも楽しめるようになったと思います」。

 

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それまでより移動は少し大変にはなりましたが、風が気持ち良くて静かな鎌倉山での暮らしを気に入っていると言います。「特に何もしなくて、ただ自然を感じる。この街にあるそれだけの時間が贅沢に今思えるんです」。


仕事も休みも一緒なので、ほぼ24時間を共に過ごす千佳さんとの暮らし。愛犬であるつるちゃんとの散歩の時間も欠かせません。プロレスや新喜劇など共通の趣味を持つ堀内さんと千佳さんは、自分たちの暮らしをつくる上でも感覚が近いそうです。

「自宅にも好きなものを詰め込んで、自分たちの暮らしを自分たち主導でつくっている感覚を今は持てています」と、堀内さんは嬉しそうに話します。壁一面に広がるコーヒーミルの棚をつくったり、たくさんのCDを集めたスペースがあったり、好きな絵や写真を飾ってみたり。

お店での時間だけではなく、暮らしも心地よくすることで、この街で過ごす時間がより充実してきました。

 

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「人生、毎日を濃く生きていきたいと思うんです」。

そう話す堀内さんは千佳さんと手を取り合いながら、これからも鎌倉でお店も暮らしも楽しんでいくのでしょう。そしてそんな2人とディモンシュは、ずっと鎌倉の街に必要とされ続け、愛され続けるのだと思います。

 

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PROFILE

堀内 隆志

『ヴィヴモン ディモンシュ』マスター。1994年にカフェを開き、2009年からは自ら焙煎も手掛ける。ブラジル音楽のCDプロデュースや選曲、FMヨコハマや湘南ビーチFMでレギュラーを持つなど、音楽にも造詣が深い。

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