
湘南の未来への希望である学生との学び。そのためにテラスモール湘南ができること。
湘南で暮らす人たちの日々が、もっと豊かになるように。
テラスモール湘南は、日々商業施設の枠を超え、地域との繋がりを深める様々な取り組みを実施しています。
その取り組みの一つとして、湘南で学ぶ学生の皆さんに対して学びの場を提供するという趣旨のもと、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの講義「応用認知科学」との連携をしています。
2021年にテラスモール湘南がフィールドワークの場を提供したことから始まった学びの機会。今では課題解決に向けた具体的な提案までを学生の皆さんの視点から考えるPBL(プロジェクトベースドラーニング)形式を採り入れた、実践的な取り組みへと発展していきました。
テラスモール湘南の相澤秀之所長は、この取り組みに感謝していると話します。
「元々テラスモール湘南は、この街に商業施設をつくることになった当時から、地域との連携を意識し、地域の声に寄り添った施設づくりを心がけてきました。だからこそ、湘南で学ぶ学生の皆さんとの連携や、直接声を聴くことができるこのような機会は大変貴重に思っています。皆さんが実践的に学ぶ機会として活用いただき、共にこの場所をつくり続けることができたら嬉しいです」。
さて、「認知科学」とは人の心のはたらきや性質を理解する学問のことで、「応用」と冠しているのは、認知科学の知識を世の中のさまざまな課題解決に活用していくという意味が込められているそうです。世の中の問題の多くには、何かしらの形で人が関与しているため、人の心の性質という観点から問題を捉え直し、また深く掘り下げて考えることで解決の糸口が見つかるはず。
当講義を担当する小俣貴宣先生は、テラスモール湘南のような実世界の現場を舞台に学ぶことに大きな意味があると話します。「受講生の皆さんにとって身近な存在である商業施設の中にも授業で学んだ認知科学の知識がかかわっていることを肌で感じてもらえるからです。商業施設には建物の造りや商品の置き方など、あらゆるところに人の心や行動に働きかける施策が散りばめられています。湘南藤沢キャンパスから近く、地域に寄り添う取り組みをされているテラスモール湘南にお声がけさせていただき実現したこの機会を通して、大学での授業と実社会における事象の接続性を体験し、学んでいただきたいと思っています」。
テラスモール湘南をフィールドにした課題説明を受け、解決に向けた議論を重ね、テラスモール湘南の皆さんに向けて提案していく。今回はそのプレゼンテーションを取材しました。
湘南に暮らす人の視点から課題解決に取り組む。
今回の授業における今年度の課題として、テラスモール湘南からは4つのテーマを提示しました。テラスモール湘南が地域とのSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション:企業と社会のサステナビリティの両立を目指す考え方)の取り組みを発信するオウンドメディア「湘南と。」の活用や、コロナ禍で変容した商圏に対する課題など、そのどれもが、まさにテラスモール湘南が課題として捉えている実践的なテーマです。
それぞれのテーマに対して2〜3名のグループに分かれ、認知科学の視点に基づく提案がなされました。寝る間を惜しんで準備をしてきたという学生の方もいるほどの熱の入ったプレゼンテーションに、集まったテラスモール湘南の皆さんも真剣に耳を傾けます。
どのグループのプレゼンテーションも利用者・生活者の視点で課題を整理し、来館者の年齢分布や顧客動線などの既存データも参照しながら課題そのものを掘り下げ、どうすればテラスモール湘南が街の人にとってより魅力的な場になるかという、自分たちなりの解決策を提案していきます。
「湘南と。」というオウンドメディアについては、このメディアをもっとたくさんの人たちに触れてもらうためにはどうすれば良いか?という、テラスモール湘南からの課題が掲げられました。
それに対して、学生の皆さんはオウンドメディアのそもそもの役割の定義に立ち返ることから議論を始めました。そして、従来のメディアの枠組みを超えた領域まで想像を広げるクリエイティブで柔軟な提案を行い、会場からは思わず感嘆の声があがります。湘南で暮らす人たちとテラスモール湘南の距離をもっと近づけるために、オウンドメディアはどうあるべきなのか。環境情報学部1年(取材当時)のエブラヒミ謙さんらのグループは、このように考えました。
「豊かで落ち着いた上質な湘南ライフの実現・支援という、テラスモール湘南のSXに向けてオウンドメディアができることを考えました。湘南の人たちを常に真ん中に考え、湘南の人たちが能動的にかかわることのできるテラスモール湘南とは、という問いを持ってグループ内で議論を重ねました」。
だからこそ、その提案の範囲はオウンドメディアの枠に留まらない範囲にまで発展しました。
「オウンドメディアの内容をより多くの方々に読んでいただくためには、訪れる人を増やすための導線をいかに効果的なものにするかという現実的な視点も大切だと思います。でも私たちは、街で暮らす人たちの視点に立ちながら課題の本質に向き合うことで、テラスモール湘南のSXを実現できればと思いました。たとえば、テラスモール湘南を舞台にした情報発信や催しの企画を考えるにあたって、時には“ 湘南の人たちと共に企画し、つくる”ことからオウンドメディアを交えて実現できたら、湘南の人たちとの距離はもっと近づいていくのではないでしょうか」。
そんな発想から導き出した提案は、まさにオウンドメディアというものを起点として人の心がどう動くのか、応用認知科学の視点に基づく提案となっていました。
各グループのプレゼンテーションが終わった後の質疑応答では、実際の企業で見られる光景のような白熱した意見交換も。現場を熟知しているテラスモール湘南の皆さんからのフィードバックを受けて、それぞれの学びや思考がさらに深まった様子が感じられました。
大学での学びを実生活の問題解決に繋げて深められる貴重な機会に。
プレゼンテーションの終わりには、相澤所長からの講評がありました。
「私たちの課題に対して『なぜ?』を繰り返して問うことで課題の本質を捉え直したり、課題をポジティブな提案で解決するアイディアに繋げたり、良い意味で期待を超える発表でした。若い世代にもっと来館していただきたいという想いも持っているので、そういう意味でも皆さんのアイディアを取り入れながらより幅広い方々に受け入れられる場所となるテラスモール湘南をつくっていきたいなと改めて感じています」。
最後に小俣先生から、学生の皆さんに向けてメッセージがありました。
「大学で学ぶ知識は社会では役に立たない、という声を耳にすることがあります。この声に対する私の意見は『役に立たない』のではなく、『役立てられていない』のだと思います。授業を通じて学んだ知識を、問題解決に向けた『武器』として活用し、将来皆さんが直面するであろう問題解決の場面で役立ててほしいと強く願っています」。
小俣先生は、学生皆さんの未来に向けてさらに言葉を続けます。
「今回、テラスモール湘南の皆さまからご提示いただいた課題はいずれも簡単なものではなく、答えが一つに定まるものではありませんでしたが、こうした困難な課題に向き合った経験が、皆さんが将来直面するかもしれない問題解決における糧になればと期待しています。想像を超える不確実で困難な状況に直面した際、傍観したり、ただ立ち尽くしたりするのではなく、目の前に迫る危機を乗り越えていく力を習得してもらえたらと思います」。
街に学びの場があることは、きっと街の未来にとって良いことだから。
発表を終えた学生の皆さんも、どこか充実した表情で講義への感想の声を寄せてくれました。
「普段受講している大学の他の講義から学ぶところも大きいのですが、その一方で今回のように実生活と結びつけて学ぶことができる機会は新鮮で刺激になりました」
「テラスモール湘南の皆さまから直接フィードバックをいただくことができ、自分たちの考えたことを客観的に捉えることができて勉強になりました」
「自分たちにとって身近な場所で、自分ごとで課題に向き合うことができる、貴重な学びの機会をいただけて嬉しかったです」
また、オウンドメディアの課題に取り組んだエブラヒミさんは、今回の講義に向き合った経験が物事の捉え方を考える上でとても有意義だったと話します。
「今回、オウンドメディアの役割の再定義から議論を始めたのですが、それは小俣先生からいただいた助言の影響が大きかったです。その助言は、エレベーターがなかった時代、歩きづらい階段をいかに歩きやすくするか、という問いが与えられたとして、その問題を解決するためには『目に見える階段に関するペインポイントをいかに改良するか』と考えるだけではなく、『そもそもなぜ人は階段を利用するのか、人にとって階段とはどういう存在なのか』と問いの再定義を行えば、『上層階に辿り着くための手段として、昇降する空間、つまりは今でいうエレベーターをつくるのはどうか』という創造的な解決策が導き出せる可能性がある、というものでした。課題の本質を深く捉えて、創造的な問題解決に繋げるためのこの考え方は、これからの人生において困難にぶつかった際にも役立てていきたいと思っています」。
実践的な学びの機会に参加したことの楽しさを、最後にみんなで共有しながら、講義は終了となりました。
これからもテラスモール湘南は、街で暮らす人たちとの繋がりを深める場や機会を提供しながら、街と共に成長していく。未来ある学生の皆さんに寄り添い、共につくりあげる学びの機会が、テラスモール湘南とこの街のより良い未来につながっていくと感じました。