
1.テラスモール湘南で、この街のアートカルチャーを。
テラスモール湘南で、この街の自然と共生する新しい価値・文化をアートを通して発信する取り組みを2022年から行なってきた、今年で4年目となる『テラスアート』。

昨年までのアーティストの発掘を見据えたアワード形式を経て、今年はワークショップや展示を行うスペシャルイベントとして地域との関わりをさらに大切に考えた形となりました。湘南に根差して「共に創る、共に楽しむ」ことで、街と一緒にアートを通じて新たな繋がりと発見を提供したいという想いが込められています。
多くの方が訪れ、街とアートとの距離を近づけた『テラスアート2025』。今回は、このスペシャルイベントの当日の様子をレポートさせていただきます。
2.ふらりと気楽にアートと出合える『テラスアート』。
今年のスペシャルイベントには、アートプロジェクトを数多く手掛けてきた『The Chain Museum』がキュレーションした3組のアーティストが参加しました。

その一人である嘉春佳さんによる『Patch the Shonan Pieces』は、テラスモール湘南に訪れる方から募集した古着を繋いで編んだ作品です。湘南で暮らす方が過ごした時間・生活の記憶が残る古着の断片(pieces)を縫い、継ぎ合わせて(patch)、湘南の日常の景色が描かれました。

嘉さんはこれまで、古着を縫う、編む、畳んで積み重ねるなど、手仕事を通じて布の記憶を再構築することをテーマに制作を行ってきました。「その地域で集めた古着を使うことで、土地の環境や人々の営み、そして生活の痕跡を作品に反映したい。その街が重ねてきた時間と今を生きる人の時間を繋ぎたいと考えています」。

2022年に招待展示として参加したことが、『テラスアート』との出合いでした。「当時と比べて、今回の展示ではこの街の暮らしに近い記憶を素材としたことが、大きな違いです」。そしてテラスモール湘南に訪れる方から、段ボール3〜4箱(約300〜400着)ほどの古着が集まりました。

嘉さんは、湘南という街の解像度を上げるために藤沢にある浮世絵館を訪れたと言います。「浮世絵に向き合うと、それが当時の人々の暮らしを残すものだということに気付きました。生活が図案に反映されるという伝統的なパッチワークの構図と重なるところがあるなと感じたんです」。その結果、葛飾北斎の描く波や富士山、江ノ島を望む風景が意識された、今の湘南を表現した作品となりました。

こうして生まれた、かつての景色の記憶と、現代のヨットなどの風景を織り交ぜ、過去の時間と現在の時間が一枚に共存する巨大パッチワーク。
「普段はアートに馴染みが無い人が、この場所で偶然作品に出合い、立ち止まって見上げてくれる光景に強い意味を感じています。ギャラリーとは異なる、生活の中のアートとの偶発的な出合いが魅力です」と、『テラスアート』について話してくれました。

この偶発的なアートとの出合いはきっと、湘南の日常へと繋がっていくはず。「湘南の景色にある過去から繋がる時間への気づきや、古着が繋がることで見えてくる人の生活の重なりへの想いを、持ち帰っていただけたら。この作品が、見慣れた日常の風景の別の側面に気づくきっかけになると嬉しいです」。
街の時間に嘉さんの想いが重ねられた大きな作品を、テラスモール湘南に訪れるたくさんの人たちが見上げていました。

その他にも『テラスアート2025』では、一人ひとりのやさしさエピソードを集めてひとつの作品として完成させる参加型ワークショップ、「Flowers of KINDNESS 咲かせよう、やさしさの花」も開催。
イベント当日は、葉っぱを模した画用紙に参加者の皆さんが「やさしさエピソード」を記入し、それぞれがつくった花びらのモチーフと合わせて、花壇のオブジェに差し込んでいきました。親子で参加されている方が多く、やさしさが記された一輪の花を一生懸命に花壇へ集めていく子どもたちの姿が印象的なワークショップとなりました。
このアートをきっかけに、多様な価値観や思いやりの形に気づき、多様性を受け入れ、共に生きる力を育んでほしいという思いが込められています。


また、アートインスタレーション「INTER-WORLD/SPHERE: The relation of air, water, light, and us」では、光の加減で色彩が変化し、内部に入ると水のクッションのような柔らかな感触に包まれ、触れるたびに波のような動きが広がる巨大な環境アート作品が展示されました。
その動きは周囲の人々とも共鳴し、自然や人との繋がりを肌で感じられる、五感を使って楽しむ新しいアートを体験していただきました。11月から設置されたツリーと相まって、幻想的な風景が広がりました。


3.未来の湘南を担う子どもたちへ、「2市1町イベント」。
『テラスアート』の未来への眼差しは、この街のこれからを担う子どもたちへと向けられています。
藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町の2市1町が連携して、街にゆかりのあるアーティストのyuyuさんと共に、子どもたちがアートに触れる機会をつくるワークショップが開催されました。

「開催場所として、神社や市役所など複数の候補があったのですが、人が集まって普段アートに触れない人にも届く場所として、テラスモール湘南が最適と判断しました」と、イベントを担当された市の方たちは話します。
まず午前の部では、yuyuさんが描いた2市1町をイメージした下絵の上に、子どもたちが自由に絵の具を塗っていきました。このイベントのプロデューサーであるNPO法人3F Community Serviceの内田さんは、「共同制作型のワークショップとして、制限を作らずに自由な発想を引き出す内容としました。絵の正解を提示せず、創造的な体験そのものを目的に設計しています」と話します。

子どもたちは大きな絵の中で、自分の担当エリアを選んで主体的に参加します。子ども同士で協力し合いながら、想像力をぶつけ合い、一人では描くことができない作品へと昇華していきました。
木の陰影や重ね塗りなどの高度な表現も、自然に生まれていきます。それだけでは無く、下絵には存在しなかった鳥や人など、子ども自身の発想でモチーフを描き足すなど、創造性が広がっていきました。
模倣ではなく、自分の表現で描く子どもたちが多かったことに、保護者の方やギャラリーの方からも感嘆の声があがります。




そして午後の部であるトートバッグに自由に絵を描くワークショップでは、子どもたち一人ひとりが想像力を働かせて夢中になって取り組んでいる姿が見られました。
「午後の部は、子どもたちが自分でモチーフを選んで描く自発的創造型のワークショップにしました。描く対象を自分で選び、どう描くか考えて表現するというプロセスを意識した構成です」と、内田さん。

自由なモチーフを描く子どもたちもいれば、湘南をイメージした風景を描いた子どもたちも多くいました。完成したトートバッグと共に、「自分の創造力を信じて大丈夫なんだ」という感覚を、きっと日常に持ち帰ってくれたはずです。




ご担当の市の方たちからは、「自分たちが暮らす街の絵を描くことで、シビックプライドも育まれる良い機会になりました。そして参加者が瞬時に埋まるほど、公共施設では得られない反響の大きさに驚きました」という声が上がりました。
アーティストのyuyuさんも、「私は道具のサポートをしただけで、あとは描きたいように描いてもらうことを大切にしました。こんなに広い場所で大きなキャンバスに絵を描ける体験は、日常ではできない特別な創造経験。絵を描く楽しさをまっすぐに感じて欲しい」と、話してくれました。

午前の部で描かれた作品は、藤沢・寒川・茅ヶ崎の公共施設で巡回展示され、広く市民に届けられるとのこと。行政×アーティスト×商業施設が連携したこの取り組みは、新しい文化づくりの形としてこれからさらに発展していくはずです。
4.湘南のアートカルチャーを育む『テラスアート』のこれから。
今年の『テラスアート』は、街で暮らす方が今まで以上に主体的に参加してくれたイベントとなりました。アートと共にある豊かな時間を皆さんと一緒につくることができて嬉しく思っています。
湘南の暮らしにアートが寄り添うような日々を、これからも街の方と一緒に重ねていけますように。テラスモール湘南では、地域に根差し、街と一緒にアートを振興していきたいと考えています。未来へと続いていくこれからの『テラスアート』に、ぜひご注目ください。









