Terrace Art Shonan AWARD 2023 Terrace Art Shonan AWARD 2023

テラスモール湘南は、湘南という文化と
そこに暮らす人々との調和を考え、
家の延長でありながら外の自然も感じられる
人と人が自然に声を掛け合う「テラス」のような場所です。

「テラスアート湘南」アワードは、テラスモール湘南を舞台に
自然と共生する新しい価値・文化を発信する、
次世代を担うアーティストの発掘を目的としたアワードを開催します。

  • 応募テーマ

  • Shonan NatureShonan Nature

    「湘南」の自然、時間、カルチャー、ライフスタイル、サスティナビリティなど
    テラスモール湘南という場所での展示を見据えたサイトスペシフィックな作品を募集します。

  • 応募要項

  • 審査員

  • 戸塚愛美

    インディペンデント・キュレーター

    戸塚愛美

    宮本武典

    キュレーター /
    東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻准教授

    宮本武典

    山本菜々子

    Art Salon SCÈNE Owner / Director

    山本菜々子

  • 賞および賞金

  • グランプリ:賞金50万/1作品

    準グランプリ:賞金25万/1作品

    テラスモール湘南賞:テラスモール湘南お買い物券&お食事券10万円

    上記すべての作品をテラスアート2023の作品として展示します。

    作品制作に発生する費用は基本、受賞者負担とします。立体やインスタレーション作品の場合、
    展示にかかる費用(作品運搬、インストールなど)は別途ご相談となります。

  • 応募条件

  • 国内在住。個人またはグループ。

    1個人または1グループ、1作品までとします。

    出品料:無料

  • 作品規定

  • 未発表・既発表は不問。ジャンルも問いません。

    応募者が作品の著作権を有し、共同制作者がいる場合は許諾を得ていることが条件。

    <平面作品サイズ>

    横2000mm✕縦1200mm✕厚さ60mm以下、重量20kg以下

    <立体/インスタレーション作品サイズ>

    横2000mm✕縦2000mm✕高さ1800mm以下(台座を含む)、重量 200kg以下

  • 募集期間

  • 2023年4月29日(土)~6月12日(月)

    募集期間は終了いたしました。

  • 受賞者発表

  • 2023年7月中旬 グランプリ/準グランプリ/テラスモール湘南賞作品発表

  • 受賞作品展示期間

  • 2023年9月30日(土)ー12月25日(月)

受賞作品展示

2023年9月30日(土)~12月25日(月)
場所:2F東モール

グランプリ

Artist Name
植松美月
Title
わきたつ
植松美月 「わきたつ」
作品コンセプト

 夜、賑やかな人波に対して、湘南の海が、深く沈んでいくように見えたことが印象的だった。
そして、海の煌めきが、行ったり来たりを繰り返す人そのものに見え、海の上をすべるように、街になっていく想像をしたことがきっかけで制作に取り掛かった。それは自然と人の関わりそのものであり、私にとっては素材とのやりとりそのものではないかと考えた。
 紙に切り込みを入れ続け、インクに浸し、集積させ、全体のかたちと色合いを確認しながら、さらに紙の長さを調整する。紙を、紫色のインクに中間まで浸すと、黄、緑、ピンクの順で、白い紙を侵食していく様子がわかる。浸透圧による色の変化は、膨大な時間を定着させる。そうして、集積させた紙はまるで島のように現れた。また、紙にインクを含ませる行為そのものが、植物に水を与えているような感覚を持ったことから、植物の葉や蔓が伸びるようにその先にある時間を想起させ、まるで花が咲くように残るのではないだろうか。

作家プロフィール

兵庫県出身、東京都在住。彫刻家、アーティスト。

経歴

2018 日本大学芸術学部美術学科彫刻コース 卒業
2020 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻 修了
2023 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程彫刻専攻 修了

受賞歴

2023 野村美術賞 受賞
2020 藝大アーツイン丸の内2020三菱地所賞 受賞
2019 平山郁夫奨学金 授与
2018 公益財団法人北野生涯教育振興会彫刻奨学金 授与
2017 国際瀧冨士美術賞特別賞 受賞

個展

2023《野村賞受賞記念展》(aaploit/神楽坂)

グループ展

2023《NOMURA ART CONNECT 2023 野村美術賞展》(鉄鋼ビルディング/丸の内)
2022《東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展2022》(東京藝術大学/上野)
2021《柳瀬山荘と彫刻》(柳瀬荘/所沢市)
2020《第68回東京藝術大学修了展》(東京藝術大学/上野)
   《芸大アーツイン丸の内》(丸の内ビルディング/大手町)
2019《石・土・金 多様な素材の中で》(gallery SOL/銀座)
2019《tokunsterlem》(ヴェストファーレン・ヴィルヘイム大学/ミュンスター)
2019《公益財団法人北野生涯教育振興会 彫刻奨学生作品展》 (日本大学芸術学部/江古田)
2018《東京五美術大学連合卒業 ・修了展》 (国立新美術館/六本木)

コレクション

2022 東京藝術大学美術館 収蔵
2021 チャームケア御殿山 エントランス
2019 山梨県笛吹市 大窪いやしの杜公園
2018 西馬込Ⅴプロジェクト[アジールコート西馬込]マンションエントランス

その他

2019 神山アートインホテル/レジデンス
   国際彫刻研究プロジェクト参加(ミュンスター)/レジデンス
   スタンレー電気株式会社/作品レンタル(2019.05-2020.05)
   東海さるく(延岡、宮崎県)/レジデンス・ワークショップ
2018 Big on Bloor Festival(トロント、カナダ)/ワークショップ

準グランプリ

Artist Name
小松未季
Title
呼気を置くこと
小松未季 「呼気を置くこと」
作品コンセプト

湘南海岸には私の思い出が息づいている。
湘南に住んで15年。感情が昂った日にはいつも海岸から波打ち際を眺めていた。
新型コロナウイルスでパンデミックになった頃、よく海岸に散歩に出ていた。その当時、波打ち際にある石が1つとして同じものがないことに気がついたとき、なんだか急に心が楽になった。
湘南を離れた今でもときどき帰ってきたくなる。
これからも私の思い出や記憶、そして私自身の心の居場所である。

作家プロフィール

1997年生まれ。
神奈川県藤沢市出身。
武蔵野美術大学 大学院 造形研究科 修士課程 美術専攻 彫刻コース2年。
*6歳から大学進学までの15 年間、海がすぐそばにある環境で暮らす。

経歴

2022年 武蔵野美術大学 造形学部 工芸工業デザイン学科 ガラス専攻 卒業。
同年 武蔵野美術大学 大学院 造形研究科 修士課程 美術専攻 彫刻コース 入学。

主な展示歴

小松未季展「呼気を置くこと」(galerieH、東京、2023)、「長亭GALLERY展2022」(長亭GALLERY、東京、2022)、「第15回ガラス教育機関合同作品展」(東京都美術館、東京、2022)、「武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科クラフトデザインコース有志による卒業制作展2021」(Spiral Garden、東京、2022)、「素 展」(GALLERY IRO、東京、2021)など

テラスモール湘南賞

Artist Name
浅野ひかり
Title
潮風を歩く
浅野ひかり 「潮風を歩く」
作品コンセプト

本作は湘南の潮風と自然をイメージした作品である。円盤状の平面作品にはビーチ、サーファー、海の生き物などを抽象的に描き、回転する様子を通じて潮風のイメージを表現している。抽象的な描写や回転する動きによって、風や波のようなエネルギー、自然との一体感や海辺の雰囲気を感じることができる。湘南の自然の美しさと魅力を再発見する機会を提供し、鑑賞者に感覚や感情を刺激することを目指す。

作家プロフィール

1996年岩手県生まれ。美術作家。2019年 東京藝術大学 先端芸術表現科卒業後、2023年 同大学大学院グローバル・アート・プラクティス専攻を修了。主な活動として、星と海の芸術祭(茨城県・2022)、小須戸ARTプロジェクト(新潟県・2022)などがある。受賞歴にArtの力賞(2023)、平成藝術賞(2019)受賞。現在、先端芸術表現科 教育研究助手として勤務。

審査員講評

戸塚愛美

戸塚愛美
今年度のアワードは、若手のみならず多世代からの応募が顕著だった。アートの創造性と想像力を介して、湘南・辻堂の街を多様な視点で知り、考え、伝える、ひとつの成果となったのではないか。審査員それぞれの視座を持ち寄り、カンカンガクガクな議論を経て、最終的に2人のアーティストを選出した。

グランプリの植松美月さんの《わきたつ》。
本作は、海の水面の煌めきが、あたかも人の往来のように見えたというところからはじまる。自然と人との関わりが作品として具現化され、素材との対話を導いている。紙に染み出した色の浸透が、蓄積された時間をかたちづける。生き物のように蠢き、繁茂するイメージの惹起は、見るものの想像力が「わきたつ」ことを推し進める。

準グランプリの小松未季《呼気を置くこと》。
作家自身に根付いている湘南の思い出をもとに、手繰り寄せ、生成されたかたち。石の景色を引用し、無為の自然にあたらしい物語を紡いでいる。自身の体で経験した繊細な自然のゆらぎは、丁寧にひも解かれ、息を与えられているようだ。湘南の自然のもつ、たくさんの気づきから生の手がかりを読み替え、美しい時間を呼び起こしている。

どのように湘南に接近し、表現としてかたちづけているか。湘南の街に向けた独自のまなざし。見るものにゆらぎと奥行きを与えながら、結晶化した表現。秀逸な2人の作品を、テラスモール湘南でぜひご覧いただきたい。

Profile

インディペンデント・キュレーター。公共空間における展示のあり方に関心を寄せ、地域に根差した展覧会やアートプロジェクトの企画・運営に携わる。主な展覧会に「喩でもなく訴でもなく」(2020〜、東京都)、さいたま国際芸術祭2020公募キュレーター企画展示「I can speak」展など。2021年より、テラスモール湘南での地域のリサーチによる現代アート作品展示「Terrace Art」のキュレーターを務める。

宮本武典

宮本武典
植松美月「わきたつ」
消費者の目線・導線を誘引するため、ブランディングとマーケティングに基づいて綿密に設計された巨大なショッピングモールで、私たちはいったいどのようなアート体験をつくれるだろうか。
競うように商品やサービスを演出する空間に、一見して”馴染む”デザイン性をまとわせつつ、そこに回収されないテーマやメッセージを押し出す戦略も有効だが、一方で、まったく別次元からやってきたような”違和感”によっても、モールを行き交う人々の、消費者としての視線や身振りを、アート体験へと転化させることはできないだろうか。
本作「わきたつ」を見たとき、このつかみどころない奇妙な物体が、ショッピングモールに突如として、そして、幾分ささやかに出現する景色を空想してワクワクした気持ちになった。テラスモールで売られるトレンドから練り上げられた膨大なモノやサービスの、どんなカテゴリーにも当てはまらない、むしろそうした価値や美の基準からこぼれ落ちたモノたちが、ホコリのように集積して、私たちに何か大切なことを伝えようとしているかに見えた。
「わきたつ」とは、この物体の生成を表すと同時に、この謎めいた現象に足をとめて対峙する人々の心のなかで沸き起こるアートの働きであってほしい。本作は賑やかなショッピングモール空間においても十分に、そうした意味や作為をこえた芸術的な対話を可能にする力を有していると私はみた。


小松未季「呼気を置くこと」
そのままでも美しい天然の石に、最小限の手を加えるアーティストや工芸家の仕事は古今東西にあり、本作も際立った造形の新しさやロジックがあるわけではない。しかしそれでもなお、ここに提示された石と吹きガラスの素朴な配置に惹きつけられてしまう自分がいる。
作品に添えられた作者のテキストを読んだ。皆が孤立していた緊急事態宣言下、人が消えた湘南の浜でひとり、うつむいて歩きながら、マスクを外して深呼吸する作者の姿が浮かんだ。本作は、そのときの彼女の「呼気」が、ガラスの膜になって石に吸着したのだろうか? そんなふうに、石、ガラス、テキストが想起させるイメージが、まだ私自身の肺のなかにとどまっている”不穏な澱のような何か”と微かに共振した。
世界を覆った新型コロナウイルスのパンデミックから、私たちは未だ完全には回復していない(むしろこれから露呈してくるかもしれない後遺症に怯えている)。波打ち際の石たちは、そのような人間の事情には無関心で、各々の悠久の時間でまどろんでいる。
天然の風景は人の感情とは関係なく自立している。海辺の石や荘厳な夕日を”息吹かせ”て、感動や思索へと誘うのは、いつだって私たちの内なる心の作用なのだ。

Profile

キュレーター/アートディレクター。東京藝術大学准教授。海外子女教育振興財団の派遣プログラムでバンコク赴任、武蔵野美術大学パリ賞受賞により渡仏、原美術館学芸部を経て2005年に東北芸術工科大学へ。2019年3月まで同大教授・主任学芸員を務め、東北各地でアートプロジェクトや東日本大震災の復興支援事業を展開。2014年に『山形ビエンナーレ』を創設しプログラムディレクションを3期にわたって手がける(〜2018年)。2019年に角川武蔵野ミュージアム(隈研吾氏設計)開館事業にクリエイティブディレクターとして参加したのち、2022年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻准教授に着任。2023年5月より群馬県前橋市の美術館「アーツ前橋」のチーフキュレーターも務める。

山本菜々子

山本菜々子
大変多くの方々にご応募をいただきましたが、テーマのせいか、どの作品も夏の潮風を感じるような輝き溢れる作品で、大変楽しく拝見しました。

グランプリの植松美月さんは、とても知的に、そして真摯に作品に向き合われていて、本アワードにもきちんと向き合って下さっているところが、グランプリにふさわしいと思いました。
別の場所で、複数回大きな作品を拝見したことがありますが、スケール感、質量のコントロール、その素材の持つ力を引き出し逆手にとるような力量に驚かされました。
鉄は軽やかに、紙はどっしりと。
本作品は紙で作られた彫刻ですが、紙の持つ軽さや鋭さや優しさや包容力などを的確に捉え利用したことで、ふんわり、どっしりとした不思議な存在感を生み出していて、目にした方は、きっと、これは何? なぜこれがグランプリなの?など、様々な感想を持たれるのではないでしょうか。
興味を引くこと。そして、注目に耐えうること。とても大切な第一条件だと思います。

準グランプリの小松未季さんは、人生のアウトラインとステートメントの延長線上に、綺麗に、そして気取らず存在する作品のあり方が大変美しいと思いました。
見慣れたもの同士の組み合わせが生み出す違和感や、美しく透明な佇まいに、見る人は皆目を惹かれると思いますし、SNSなどで作品を拝見する限り、クオリティや挑戦される姿勢も素晴らしく、欧米をはじめとする海外に出て行かれてもいいのかもしれません。
日本のアートの世界では、市場と学術の世界が乖離しているという一面が少なからずあります。誤解を恐れずに、噛み砕いてとても雑に言えば、わかりにくいもの、難しいこと、シリアスなことを言っているものが重要で、通りのいいものはアウトプットがどうであれ軽い、みたいなことでしょうか。(もちろん、それだけではありませんけれど、あくまでとても雑に言えばのお話です)
そんな中を、このままの真っ直ぐさと透明感を持って航って行かれるのには、大変な体力が必要とされると思います。
ぜひたくさん旅をして、広い世界に目を向けて、長く、真っ直ぐに制作を続けて行かれてください。

お二人の、そしてご応募くださった皆様の、これからのご活躍を心より楽しみにしています。

Profile

Art Salon SCÈNE Owner/Director。2016年より、南青山のアートサロンSCÈNEにて展覧会を開催する他、国内外で百貨店、飲食店、ホテル、オフィスなどのアートキュレーション、企業やコレクターのアートコンサルティング等を行う。

テラスモール湘南賞講評

カラフルな円盤のそれぞれに湘南の自然や生き物が抽象的に描かれていて、湘南を表現するためのパーツ(要素)がたくさんあることに気づかされました。
たくさんのパーツはあるけれども、互いが呼応しあう共存・共生の存在であり、まるで湘南にはその1つの要素も欠けてはいけないことを作品全体の統一感によって表現されていました。
さらにこの作品は街やショッピングセンターに足を踏み入れるときの、わくわくと高揚する気持ちを体現しています。湘南で感じることができる気持ちのいい潮風や蒼い空の空気を身にまとい、ショッピングセンターという日常のとなりにある特別な日々が感じられる作品になると思います。
お子様にも大人の方にも楽しんでもらえるような可愛らしさとメッセージ性を感じる作品になると期待しています。9/30~の展示作品が楽しみです。