グランプリ
自然は計算している。徹底した自然法則の演算によって現れる形は美しい。雨を制御する。自然ではランダムに地面に落ちる雨をコントロールする。自然現象の 1 部に手を加えることで、自然法則を用いながら自然がまだ試していない形の可能性を探索する。自然と人工の間で、未だ自然が算出していない未自然造形を彫刻する。その場所にあるものから形が立ち上がり、自然環境の中での時間経過や訪れる人々のインタラクションによって変容していく。そこには湘南の自然や時間が彫刻され、湘南という場所を心の中に想起させるのではないだろうか。
2000 年三重県生まれ。建築設計をバックグラウンドとして、アルゴリズミックデザインを研究している。自然法則というアルゴリズムを用いて形を計算する。自然と共同設計し、自然現象とのインタラクションによってまだ見ぬ現象 ,彫刻を探求する。
グランプリに「Shonan Beach Sculpture」。
制作過程に現れる、作品に対する徹底さや途方もない時間の堆積を、粘り強い努力によって表現として成立させている様は、見る人を圧倒するだろう。
自作した装置を活用して湘南の海岸で行われた実践。塑像と彫刻の反復作用から成り立つ立体作品は、すべてがテクノロジーに取って交わられているという予想に反し、想像以上に「手」がかかっている。テクノロジーを起点として生み出される本作の彫刻としての可塑性は、日々の自然のあり方を再考させるきっかけを与えてくれると同時に「雨が降って地固まる」という言葉そのもののように極めてシンプルな構造自体が自律し、大きな循環を想起させる。
非常に意欲的で熱量のある提案だった。美的な研究や展示の際の工夫の必要性はあるものの、今後の期待も含めて、鑑賞体験の充実を期待したい。
準グランプリに「閉じられた窓と少しだけ開いた扉、もしくはそとへの夢を見る部屋」。
我々の暮らしている空間に存在している扉や窓は「別の空間へ穿られた穴」だと作家は語る。テラスモール湘南の空間に突如出現するだろう、扉や窓。本来あるはずのない場所に部屋が現れ、扉や窓といった暮らしの中で空間を隔て、異なる場所へと誘う装置が現前化する。マスキングテープを用いることで立ち上がる、かすかな影や色彩の重なりは、雑多な生活の中で、すくいとられる小さな憩いのようでもある。わたしたちが穿られた穴をどのように捉え、どんな知覚を得るのか。ショッピングモールという公共空間から異なる世界へ接続する、誘いの場を楽しみにしたい。
さて、テラスモール湘南の空間がどのように変容するのか、展示作品を見に、是非足を運んでいただければうれしい。選出された2人のアーティスト、そして応募くださったアーティストの皆様の今後の活躍をそっと応援しています。