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2024.03.29
「湘南と。」Vol.3 波に身を任せるように、心の向くままゆらゆらと。 東京と湘南の2拠点生活を続ける、 モデルKIKIさんの暮らし方

聞き手:andsaturday inc. 庄司真帆

 

東京で忙しく働いた自分が、湘南で自然へと帰っていく

 

モデルであり、執筆の仕事もされているKIKIさん。彼女の文章は凛としていて優しくて、ずっと憧れていた人でした。お会いしてみると、まさに凪いだ海のように透き通っていて穏やかな方。5年ほど前から、東京と湘南との二拠点生活を続けているそうです

 

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小さな頃から、東京で暮らしながらもヨットに乗るお父様の拠点であった逗子に訪れることで、海が近い暮らしに触れてきたというKIKIさん。大人になってから縁あって鎌倉で一人暮らしをしていましたが、結婚後に仕事などを理由に東京に拠点を移すことになりました。「それでも、この街での暮らしを手放したくなかったんです」と、東京で暮らしながらも週末や長い休みのたびに家族で湘南を訪れる、二拠点暮らしが始まります。


実際に二拠点生活を始める前、鎌倉に暮らしていたKIKIさんは、仕事に打ち込む忙しい東京での自分が、湘南に帰ってくることでニュートラルにリセットされていることに気が付きました。「駅に降り立った瞬間に、空気が違って空が広くて。ほっとしている自分がいました」と、KIKIさん。限られた時間の中でも、気持ちがリセットされて、公私の切り替えがしやすくなったように感じたそうです。

 

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朝起きて窓を開けて、風の音や匂いを感じて、朝ごはんを食べる。天気の様子を見ながら、海なのか山なのか、今日はどこへ行こうかとぼんやりと考える。「水着にシャツを羽織って自転車に乗って海へ行って、そのまま家に帰ってくることもできて。肩の力が抜けている、そんな過ごし方が好きなんです」と、優しい表情で話してくれました。


特にモデルの仕事では早朝の撮影も頻繁にあり、鎌倉に暮らしていたときは東京の実家に前泊することもしばしば。充実しつつも気負った感じもある仕事モードの自分を支えていたのは、今も昔も湘南で過ごす時間でした。実際に暮らしていくうちに、文化もありつつ交通の便もあって、海も山も近いこの街のことを、もっと好きになっていきました。


「東京にいると、あの展覧会行きたいのに予定があって行けなくて残念…とか思ったりすることもあるのですが、湘南にいると良い意味で予定を入れなくても割り切れる気がするんです」と、KIKIさん。本当に必要なことだけを選択するようになって、人生がよりシンプルに充実してきたという不思議な感覚を覚えたと言います。

 

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たくさんの出会いがあったり、新しい刺激を得たりすることのできる東京の暮らしも大切。だけど、それだけだとバランスが悪くて、湘南で自然に溶け込む時間も自分には必要。その間を、波のようにゆらゆらと行き来しながら、KIKIさんは自分らしい暮らしのスタイルで日々を過ごしています。

 

 

仕事にも暮らしにも自分が納得している姿を、子どもに見せたいから

 

鎌倉から逗子に拠点を移した今も、多くの週末を家族で一緒に海街で過ごしています。とはいえ、子どもたちと愛犬の移動を伴う二拠点生活は、綺麗ごとばかりではないそうです。


子どもたちのご飯や着替えを車に詰め込み金曜日の夜に逗子の家に来て、仕事と保育園のために月曜日の早朝?にはまた東京に戻っていく。「よくこんな家族の大移動を続けているなとたまに思いますが(笑)。でもみんな、湘南で過ごす週末をとても楽しみにしています」と、KIKIさん。両親の仕事の都合で逗子に来られない時の、子どもたちのがっかり度合いは相当なもの。

 

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仕事が忙しくて余裕が無くなるとどうしてもカリカリしてしまいがちですが、子どもたちに見せたいのはそんな自分ではなくて。「私が選んだ仕事はこういうもので、こんなに楽しんでやっているんだよって、その姿を子どもたちにできるだけ見せたいなと思っています」。そしてそれは、暮らし方も同じだとKIKIさんは話します。


自分が選んだ暮らしを楽しむことで、こんな生き方もあるんだよと子どもたちに示したい。週末の家族の時間を大切にして、暮らしを共に過ごして思い切り遊ぶ。「仕事も暮らしも、自分で納得したものを選べていないと、子どもたちにも伝わらないですから」と、子どもたちにも自分の好きなことや居場所を選んで見つけていって欲しいとKIKIさんは願っています。

 

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今は事務所から独立し、フリーでお仕事をされているKIKIさん。「どうしても東京の家にいると、仕事でパソコンを開いてしまったり、家事をしたりと忙しなく過ごしてしまうんです」。仕事と暮らしのメリハリをしっかりとつける上でも、平日の東京と週末の湘南という形が、とても良いバランスに感じているとのことでした。


湘南での暮らし方を通して子どもたちに親の姿を見せることで、家族はもっと家族になっていくのかもしれません。

 

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自分の居場所は、きっと1つじゃなくて良いはず

 

そしてKIKIさんがこの場所で暮らす理由には、人との良い距離感にもあると言います。「最初に鎌倉に暮らし始めたのも、友人に誘ってもらったのがきっかけでした。突然決めたので、周りの友人には心配されましたね(笑)」。導かれるように暮らしてみたら、肌が合って今に至るそうです。ご縁を辿って、KIKIさんはしなやかに自分の居場所を見つけていきます。


東京にいる時は街の人とつながるという感覚は少なかったけれど、鎌倉や逗子ではお店の人と仲良くなることも。「はじまりは鎌倉にあるオイチイチというお店。そこからご縁を広げていただいたり、何かとお世話を焼いていただいたり。この街の、人とのちょうど良い距離感が嬉しいんです」と、KIKIさん。仕事からは離れたところでの程よい人と人との関係性が、この街の心地良さの根っこにあります。

 

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自分の居場所を見つけるために大切なことは、この場所じゃなきゃいけないんだ、という風に執着しないということかもしれません。「もし今いる場所が苦しかったりダメになったりしてしまった時は、元いた場所に戻っても大丈夫。居場所が複数あることは、息苦しさから離れて自分たちらしく暮らす上でも大切なことなんじゃないかなって思うんです」と、KIKIさん。


家族や仕事の状況によって、もしかしたら今いる場所を離れるかもしれない。いずれはこの暮らしを手放す可能性も当たり前のように持ちながら、KIKIさんは自分たちの今と未来をフラットに捉えています。二拠点での暮らしは、いつでも頼れる誰かと居場所を複数持つためにも、家族にとって大切な意味を持っているようです。

 

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湘南での暮らしに興味がある人にとって、KIKIさんのような二拠点生活に憧れる人も多いはず。でも、大変そうだし、自分には無理かもしれないし、一歩を踏み出せない…。「確かに二拠点での暮らしは大変な面もあるけれど、私の場合はリラックスできて自分たちが良い方向に振れることを知っているから、その労力をかけられているんだと感じます」。そうKIKIさんは教えてくれました。


まずは一歩、好きな気持ちに従って踏み出してみることが大切。「友人に誘ってもらい始めてからのめり込むようになった登山もそうなのですが、好きなことにかける労力って後に残らないと感じているんです。好きな暮らし方だから次の平日にも疲れを持ち越さない気がしています」と、KIKIさん。

 

「ちょっと面白いのが、東京と逗子の家のクローゼットを開けると、中にかかっている服の感じも違うんですよね。私たちの軸は変わらないけれど、二つの違う街で違う自分たちを、今は楽しんでいたいと思います」。


一つの場所には留まらずに東京と湘南を行き来する、今の暮らし方を気に入っているというKIKIさん。波に身を任せるように、心の向くままにゆらゆらと。今日もKIKIさんは、自分たちの気持ちにフラットに向き合いながら、湘南滞在時の家族との暮らしを楽しんでいます。

 

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プロフィール

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KIKI

 モデル。写真家。1978年東京生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。 雑誌をはじめ広告、テレビ出演、映画などで活躍。エッセイなどの執筆も手掛け、旅や登山とテーマにしたフォトエッセイ『美しい山を旅して』(平凡社)など多数の著 書がある。文芸誌『小説幻冬』(幻冬舎)にて書評を連載中。 また、ライカの会報誌『ライカスタイルマガジン』にて撮りおろしの写真とエッセイを担当。自身の写真展で作品を発表するなどの活動もしている。

@kiki_campagnepremiere

 

 

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