NEWS
2024.04.19
「湘南と。」Vol.4 幸せなときも、たとえ辛いときでも笑っていたい。湘南の太陽のようにパワフルな、「はなの仕立て屋」としての高橋静恵さんの生き方
聞き手:andsaturday inc. 庄司真帆
湘南の街の憩いの場となっている、はなの仕立て屋さんがあります
はなの仕立て屋として、湘南は大磯の街で『Yurari』という花屋を構える高橋静恵さん。湘南で輝く太陽のように温かくおおらかに包み込んでくれる人柄で、街でも多くの人に愛されています。
JR大磯駅から程近い場所にある、元々パン屋だった「進昇堂」には、家具や雑貨など細部に至るまで、高橋さんの好きなものばかりが詰め込まれていました。「自分の感覚で全てを選んだこのお店こそが、私にとって最も居心地のよい場所なんです」と、とびきりの笑顔を見せてくれます。
長い時間を経てきたアンティークな手触りを感じる店内には、高橋さんのように元気で華やかな印象がある鮮やかな花々が並んでいました。また、馬蹄や鹿の角を組み合わせた作風にも特徴があり、そのユニークさも相まって、唯一無二な雰囲気を醸し出しています。
店舗を持たない花屋として活動を続けていた高橋さんは、大磯の町で定期的に開催されるマルシェ『大磯市』に時々出店していたそうです。そんな活動の中で応援してくれる人も少しずつ増えてきて、気づいたら月一の花屋を開くこととなっていました。
そして、様々な場所で開催するワークショップとPOP UPイベントでの沢山の出会いを大切にしながら、日々お花の仕立てをされています。
「とにかく、人が好きなんですよね」。そう話す高橋さんの『Yurari』は単なる花屋の枠を超えて、地元の人たちといつも楽しそうな笑い声が響く憩いの場所となりました。
街の人たちからの温かな眼差しを集めながら、高橋さんは今日も大磯の街角の風景に花を添えています。
静かな街で、日々の生きる力をチャージする
高橋さんは台湾の出身で、横浜での生活を経て、およそ30年以上前にご主人の仕事のご縁で大磯へと移住をしてきました。「横浜も気に入って楽しかったけど、大磯に来るとこの静けさにはまた違った癒しがあり、とても気に入っています」と、話します。
そんな高橋さんにとっての、湘南・大磯の魅力とはどこにあるのでしょうか。「海も山もあって、街の賑わいも程よい距離にあって、どこかノスタルジックで人の温かさにも触れられる。ちょっと昭和感のある大磯が、大好きなんです」と、笑います。
「何より、大磯って良い街だよねと心から思っている仲間たちが近くにたくさん暮らしている。それが、何より心地良いんです」と、高橋さん。
高橋さんが居心地が良いと感じるこの街の、この花屋には、同じくこの場所を居心地が良いと感じる人たちが集まってきています。定期的に開催するワークショップでも常連さんが来てくれて、時にはスタッフとして接客までしてくれることもあるそうです。
ワークショップの最中にも、他愛もない世間話をしながら、絶えず笑い声が店内に響いています。「皆が楽しそうにしていると、私も幸せになります」と、高橋さんは嬉しそうに話してくれました。
この街で、太陽のように明るく生きていくということ
いつも笑顔を絶やさない高橋さんですが、その原体験には幼少期の思い出があるそうです。
台湾から日本に来たときに、文化の違いに馴染めずに、人との関係でも悩まれた事もあったそうです。それでも、高橋さんが子どもながらに思ったことは、自分はどんなときでも笑っていようということでした。
それが、家族をはじめとする周囲の人に力を与えられることを、経験として知っているのです。
自分が笑っていれば、きっと周りの人からも笑いが返ってくるから。穏やかでいられるこの街には笑顔でいられる確かな空気が流れています。
そんな高橋さんの想いは、次の誰かへとつながっていきます。「笑っていると、他の人も笑ってくれる。それを繰り返すことで、この街で新しいご縁を紡いでいけるんじゃないかな」、そんな風に考えているとのことでした。
同じように、お花というものを通して、誰かが笑っていられる時間を想う気持ちをつなげていく。それこそが、高橋さんのやりたいことなのかもしれません。
「誰もが幸せになって、笑顔を増やしていくことができるなら、もしかしたらお花じゃなくても良いのかもしれませんね」と、高橋さん。
それは台湾と湘南という異なる文化を経験してきた高橋さんだからこそ、2つのものの間にあるご縁としての自分を大切にしているということなのだと思います。
ちょうど取材の終わり頃に、若い男性がふらりとお店へと入ってきました。地元が大磯で、パン屋から駄菓子屋さんに変わった頃から通っていたこのお店で、時々お花を買われるそうです。一級建築士に合格した自分へのささやかなご褒美として、お花を買いに来たとのことでした。
常連さんたちの拍手に包まれる店内で、「どんな感じにする?」と花を仕立てる高橋さんは、心から楽しそうで、嬉しそうで。想いを花に乗せて、丁寧にお花を選んで束ねていく。そして、それを見ているみんなが笑顔になる。そこには、温かな時間が流れていました。
シャイだと話す男性の顔が、お花を受け取ってパッと明るくなり、お店を後にする時には、自然と笑顔になっていました。
お店を後にする男性の顔も、自然と緩んでいました。高橋さんが笑っていると、こちらも自然と顔が柔らかくなってしまう。これからもずっと、高橋さんは笑顔でご縁を手繰り寄せ、花と湘南と一緒に、時間を重ねていくのです。
プロフィール
ーーーーーーーーーー
高橋静恵
湘南・大磯を拠点に移動花屋「Yurari」を構えています。何気ない日常の中に、彩り豊かな花を添えて。異国情緒溢れ、そしてどこかノスタルジックな雰囲気を花にのせています。