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2024.06.19
「湘南と。」Vol.6 人生を全力で楽しむ大人の背中を、子どもが見て育つ街。持続可能な農業の未来へ情熱を注ぐ、西村千恵さんの生き方の軸

聞き手:andsaturday inc. 庄司真帆

 

海や山で遊んで、お腹が減ったらご飯を食べる。そんな暮らしの選択


湘南の逗子を拠点に、持続可能な農業の未来に真っ直ぐな眼差しを向ける人がいます。それが、『FARM CANNING(ファームキャニング)』代表の西村千恵さんです。


『FARM CANNING』は、無農薬・有機栽培などの生産者さんから規格外野菜を買い取ってつくる瓶詰めを製造し、畑で過ごし自然と向き合う時間を共に楽しむコミュニティをつくる、この街を代表するプロジェクトです。

 

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そんな西村さんの人生を大学卒業時までさかのぼると、当時は東京にあるオーガニックカフェで働いていたそうです。「有機農業や食への興味を高めてくれて多くのことを経験できた仕事だったのですが、休日も家族を置いて家を出ていくことが辛くなってしまったんです」。

そして二人目のお子さんを授かったタイミングで、仕事を辞める決断をしました。


これからの家族の人生をフラットに見つめ直すタイミングで、暮らす場所と子育てについて考えました。「都内の保育園に通っていたのですが、一番の理想は海や山で遊び回ってお腹が空いたら美味しいご飯を食べる。それくらいにシンプルな家族の形が良いなって。だから、自然豊かな湘南での暮らしを選びました」

 

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そして移り住んだこの街で始まった、家族との時間を大切にした暮らし。そして立ち上げた『FARM CANNING』を通しての挑戦は、今少しずつ農業の未来を変えようとしています。

 


この街から、世界をより良くする仕組みをつくること


『FARM CANNING』につながる西村さんの原体験の一つとして、学生時代のドイツへの留学経験があると言います。

「当時は紛争で親を亡くした子どもたちの施設をつくることに興味があったり、理不尽な現実にある人たちを放って置けないという想いを強く持っていて。同時に、世界が抱える多くの問題は、ボランティア活動だけではなく仕組みから変える必要があることにも気づき始めていました」

 

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その情熱は形を変えて、今では農業の未来に対して注がれています。きっかけは、暮らす場所を湘南に移した後、家族で街の野菜を食べたいのに地元の安心して食べられる野菜を近所で見かけることが少なかったことへの気づき。そして、湘南国際村から横須賀のエリアで無農薬、無化学肥料で栽培する農園との出合いでした。


人手が足りないということで収穫や集荷のお手伝いをする中で、農業で生計を立てることの難しさ、そして収穫される野菜の約30%が規格外野菜として廃棄されてしまうという現実を知ります。


目の前の農家さんの力になりたい、そしてこの生命が息吹く美しい畑の魅力を伝えたいという出発点から始まった、たった一人での挑戦。小さく始まったこの挑戦は、今では湘南エリアをはじめとした広い地域の農家さんの力になり、農業の未来を少しずつ変える仕組みへと育ちました。

 

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最近では神奈川県の寒川で、無農薬でワインぶどうを共に育てるコミュニティを立ち上げたばかり。「長い時間を経て熟成されていくワインは、瓶詰めの究極の形なのかもしれないなって」と嬉しそうに次の夢を話す西村さんは、今日も誰かの街の居場所もつくりながら、農業の未来を想い続けています。

 

 

大人が全力で楽しんでいる姿を、子どもたちが見ている街


西村さんは、留学先のホストマザーからの影響を受けた、ある考え方が人生の軸の一つになっていると言います。「それは親として以前に一人の人間として、自分の人生を全力で完遂するということの大切さ。その背中を見せていればきっと子どもは自然に成長してくれるから、まずは自分の人生が最高だって誇れるように毎日を生きたいんです」


その意味で湘南には、人生を全力で楽しむ大人がたくさんいます。子どもたちと一緒になって遊びながら教育の場づくりに取り組む人、スローフードなど食を豊かにする取り組みで世界をより良くするために人生を懸ける人。みんな、この街での暮らしを目一杯楽しみながら暮らす人。

「良い波が立っていればお店を閉めてまで海に向かう人もいて。夏には海の家で親がお酒を飲んで談笑している横で、子どもたちが砂浜を駆け回っている姿も良いですよね」。そんな、大人も子どもも日々を楽しむ風景が、この街にはあります。


「FARM CANNINGを通して農家の方と繋がったり、自然を楽しむ仲間と食と畑をつなげることができて。私にとって最高の人生です、すでに何一つ悔いはないと言い切れるくらいに」。


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そんな風に、農業を通して自然の中にある全ての命を祝福して、自分の人生を謳歌することに全力疾走してきた西村さん。暮らしの中で、最も幸せを感じる時間とはいつでしょうか。


「結局は家族や友人と食卓を囲んで、美味しいご飯とお酒を楽しむことが一番の幸せ。この地域の美味しい野菜を日々食べられるという当たり前が、私にとっての生きる意味です」


農業に対して真摯に向き合い人生を楽しむ大人の背中は、街の子どもたちにとっても大きな目標となっていくはず。人生の軸を持って夢中で駆け抜けてきた西村さんは、今日も畑に入って野菜の魅力を伝え続けています。

 

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プロフィール

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ファームキャニング代表

東京生まれ、逗子在住。三児の母。都内でオーガニックカフェの立ち上げから運営に携わった後、第2子妊娠を機に三浦半島へ移住。2016年「もっと畑を日常に」をコンセプトに、FARM CANNINGを設立。流通に出ない規格外野菜の瓶詰め加工販売のほか、畑仕事を体験するスクール事業、ケータリング事業などを展開。サステナブルな食に関する事業コーディネート等を通じ、持続可能な農業や食の普及に努める。著書に『野菜まるごと 畑のびん詰め 季節のファームキャニング』(NHK出版) 『畑から生まれた野菜のいちばんおいしいレシピ』(家の光協会)。


@chie.farmcanning

 

 

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