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2024.06.28
「湘南と。」Vol.7 先入観を持たずに、流行りにも流されない。鎌倉で古着屋を営むHANAさんの、好きな服を着て過ごす暮らし方
連載:湘南と。
湘南を拠点に選んだ『暮らしのスタイル』を持っている人の言葉を通して、この街の魅力を発見して日々を豊かにする小さなヒントに出合える連載。
湘南で暮らす誰かの日々が、さらに愛おしいものになりますように。
聞き手:andsaturday inc. 庄司真帆
小さな頃から思い描いていた、この街にお店を持つ人生
観光客で賑わう湘南は鎌倉、由比ヶ浜の海に抜ける通りに、古着屋の『Bent』はあります。
ポップな色合いの店内には、カラフルで心が弾むようなたくさんの古着が並んでいました。
このお店のオーナーが、若い世代の女性を中心に熱烈な支持を集めるHANAさんです。
小学生の頃からずっと、お母さまのアパレルのお店がある鎌倉で暮らしていたというHANAさん。
「学校が終わると母のお店に帰って、絵を描いたりミシンをしたりしながら、一緒に帰るまで待っていたことを覚えています」。
そんな姿を見て育ったことで、自分でもお店を持ちたいという想いが自然と芽生えていきました。
中学生になると、古着への興味を持つようになります。
他の誰かと同じではない自分らしい組み合わせで、大切に選んだものを長く着ることができる服。
お店で一度棚に戻してしまったら、もう二度と出合えないかもしれない服。
そこに、古着の魅力があると言います。
「でも、当時は鎌倉に古着屋さんが全然無くて、東京まで古着屋巡りに行っていましたね。
ただせっかく電車に乗って探しに行っても、お気に入りの服に出合えずにがっかりすることもあって」。
だから、HANAさんは自分の街に古着屋をつくることを決めました。
お店を開くと、こんなお店が鎌倉に欲しかったんですと、同じ想いを持っていた多くの方が喜んで訪ねてきてくれました。
最近では街に古着屋が増えてきた鎌倉の中でも、『Bent』は唯一無二の存在感で、鎌倉の街角を彩っています。
古着を気軽に楽しむことを、この街で伝えていきたい
HANAさんにとって湘南は、自身のルーツがある大切な場所です。
この街の空気感や時間の流れが好きで、お店を出すときに湘南以外を選ぶという選択肢は少しもありませんでした。
「自分が本当に好きと思える街でお店を持ちたいなって。だから、地元以外では考えていませんでした。
そして自分のクローゼットを街に開くような感覚で、古着屋をはじめたんです」。
目指したのは、いわゆる玄人向けの古着屋ではなくて、誰もが古着の楽しさに触れられるお店です。
「暗くて入りにくいお店だと、古着とよい出合い方ができないですよね。
ポップで明るくて、セレクトショップのように、気軽に服を見られるようにしています」。
ディスプレイを見やすくすることで、これなら自分も着られるかもと思ってもらいたい。
そして古着のラインナップも常に入れ替えることで、訪れる度に新しい発見をして欲しい。
「古着に詳しく無くても、普段着ないような人にもきっかけをつくることができると嬉しいんです」と、
HANAさんは楽しそうに話してくれました。
気取らずに楽しむというスタンスは湘南の街にも合っているようで、今では『Bent』はたくさんの方に愛されています。
同時に、仕事以外のオフの日にも、湘南で過ごす意味の大きさを感じているそうです。
「私自身切り替えが苦手なこともあって、休みの日に家やお店にいるとどうしても色々気になってしまって。そんな時に海に出かけると、今は休む時間なんだって実感できるのも良いなって感じています」。
海でゆっくり過ごしたり、車で葉山方面に足を伸ばしたり。
このエリアに多くある緑豊かな公園で、家族みんなでゆっくり過ごす時間もお気に入り。
公私のバランスが取りやすいことも、湘南で暮らすことの良いところではないでしょうか。
自分らしい服を着て、暮らし方も選んでいく
そんなHANAさんが、古着を選ぶ上で大切にしていることはどんなことでしょうか?
「あまりトレンドや年代を意識しないで、雑誌とかも見ないようにしていて。
古着に先入観を持って向き合うのではなくて、自分が好きだと感じたものを選ぶことを意識しているんです」。
他の誰かの気持ちではなく、自分の気持ちのままに選択することの大切さを、HANAさんは信じています。
例えば、この季節だからこの色が良いという一般論ではなく、その時々の自分の気持ちで服を選んでみる。「好きな色と色を気分で合わせてみて、それがバチっと決まると嬉しい気持ちになりますよね。
そんな風に、古着を着ることの楽しさをもっと身近に感じて欲しいんです」。
そんな想いで、一人ひとりのお客さまの古着選びにそっと寄り添います。
まさにこのお店は、HANAさんの「好き」が詰め込まれたここにしかない場所で、新しい鎌倉のカルチャーシーンが育まれつつあります。
そしてそれはきっと暮らし方も同じで、自分が好きだと感じた街で、好きなものを選びながら暮らしていく。
好きな人と一緒に過ごしながら、好きな音楽を聴いて、好きな表現をしていく。
自分らしい服を着て、自分らしく暮らしていくということ。
「頭はいつもフル回転させながら、あまりそれを外には出さずにゆっくり省エネで(笑)。
これからも古着の楽しさを伝えていきたいです」。
この街で自然体で気取らずに、HANAさんは自分の「好き」に耳を澄ませて暮らしています。
HANAさんにお子さんが生まれてからは、『Bent』にもママのお客さんが増えたそう。
HANAさんは、これからの人生の新しいステップも、いつまでも変わらず「好き」な古着と一緒に、
自分の気持ちに正直に楽しみながら、この街で生きていきます。
プロフィール
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鎌倉に店舗を構えるレディース古着屋『Bent』オーナー。自らで1点ずつ厳選、ヴィンテージからレギュラー古着まで状態の良いアイテムを幅広く展開しています。